行政制度

中央行政制度 とは、国家行政機関の構成、体制、権限、活動方式など一連の規則と慣例のことである。中華人民共和国の中央行政制度には、全国人民代表大会の体制の下での中央行政機関、中央行政機関の地方各級行政機関に対する指導関係が含まれる。中央行政機関は中華人民共和国国務院である。国務院は国の最高の行政機関である。

  1. 中国の地方行政および行政地方
  2. 地方人民代表大会
  3. 地方人民政府
  4. 共産党の地方組織との関係

日本の自治体が中国の地方政府と交流するに当たっては、まずは中国の行政制度および財政制度の予備知識が必要であると思われる。以下に特集2および3において、これらの概要を紹介させていただく。
  1. 中国の地方行政および行政地方
  • 中国の地方行政
    中国の国家機構は、国家権力機関である「全国人民代表大会」(日本の国会に当たる)、行政機関である「国務院(中央人民政府)」、司法機関である「最高人民法院」、検察機関である「最高人民検察院」、中央国家元首に当たる「国家主席」、そして軍機関である「国家中央軍事委員会(実態は中国共産党中央軍事委員会と同一)」からなり、前四者については、それぞれが法律上の地位と管轄範囲に基づいて中央機構と地方機構に分かれるという構造になっている。(憲法第57条、第81条、第85条、第93条、第123条、第129条)そして、現代中国の行政地方は、基本的に省級、地級、県級、郷級の4つのレベルに分けられる。 (憲法第30条)


  • 省級地方
    2000年3月現在、台湾を除くと33の省級地方から構成されている。省級地方には、22の省の他に、4の直轄市(北京、天津、上海、重慶)、5の民族自治区(内蒙古、広西壮族、チベット[西藏]、寧夏回族、新彊ウイグル)および二の特別行政区(香港特別行政区、マカオ特別行政区)がある。
     
    香港、マカオを除けば、権力機関の地方人民代表大会と行政機関である地方人民政府が存在するが、これは以下の各級にも共通している。
     
    中央人民政府が直轄する香港特別行政区は、1997年7月にイギリスが支配していた香港地区の返還に伴ない成立したものであり、1999年12月にはポルトガルの支配下にあったマカオの返還に伴ってマカオ特別行政区が設置された。
    図-2 中国省級地方一覧

    地域 省 級 地 方
    華北 北京○ 天津○ 河北● 山西●
    内蒙古◇      
    東北 遼寧● 吉林● 黒龍江●  
    華中 上海○ 江蘇● 浙江● 安微●
    福建● 江西● 山東●
    華南 河南● 湖北● 湖南● 広東●
    広西壮族◇ 海南●    
    西南 重慶○ 四川● 貴州● 雲南●
    西藏◇      
    西北 陜西● 甘粛● 青海● 寧夏回族◇
    新彊ウイグル      
    特別行政区 香港◆ マカオ◆    

    注)●:省、○:直轄市、◇:自治区、◆特別行政区
    注2)なお、上記の省級地方の順番は、各地域ごとにまとめた中国政府が規定する順番に従っている。

  • 地級地方(331)
    省級地方の一級下のレベルである地級地方には、自治州、地級市(市轄区や県を管理できる)、そして直轄市の市轄区がある。


  • 県級地方(2126)
    地区級に一級下の県級地方は、県(内蒙古自治区の旗を含む)、自治県(内蒙古自治区の自治旗を含む)、県級市(市轄区や県を管理しない)、地級市の市轄区などから成る。


  • 郷級地方(4万5462)
    農村地域における末端の地方である郷級地方には、郷、民族郷、鎮がある。


  • 民族自治区域
    各少数民族が集中して居住している区域は、民族自治区域として区域自治を実行し、自治機関を設置し、自治権を行使することとされている。そして各民族自治区域は、中華人民共和国の分離できない部分だとはっきり謳われている。
     
    民族自治区域は、省級の自治区、地級の自治州、県級の自治県(内蒙古の自治旗を含む)に区分される。なお、民族郷は民族自治区域ではないが、少数民族への一定の配慮が行われる。(憲法第4条3、第30条3、憲法第99条3)


  • 村民委員会、居民委員会
     村民委員会、居民委員会は、村民委員会組織法、居民委員会組織法に位置づけられたそれぞれ農村、都市の住民の自治組織であり、地方人民政府ではない。しかしこれら委員会の主任、副主任、委員は、住民の選挙によって選ばれ、委員会は有権者で構成する住民の会議に対して責任を負うこととなっている。居民委員会は住民に利益をもたらす地域サービス活動を実施し、居民委員会が所在する区政府または街道弁事処の行う政策的業務を支援する。村民委員会にあっては、村における公共事務と公益事業を実施するとともに、人民政府に対し村民の意見、要求と建議の提出を行う。(憲法第111条、城市居民委員会組織法第2条、第3条、村民委員会組織法第2条)

  1. 地方人民代表大会
  • 地方人民代表大会の概要と職権
    地方人民代表大会(以下「人民代表大会」という。)は、地方における人民が主権を行使する権力機関として位置づけられ、省級、地級、県級、郷級に存在する。なお、地区や街道は、それぞれ省・自治区、市轄区・市の出先機関であり、人民代表大会は存在しないが、地区には省級人民代表大会の出先機関である地区委員会が設置され、省級人民代表大会で決定された事項について下級人民代表大会への指導等を行っている。

    人民代表大会の職権は、主として、予算や経済計画などを決定する「決定権」、同級の地方人民政府の幹部や検察、法院の幹部を選出し、罷免し、また、一級上の人民代表大会の代表を選出し、罷免する「人事権」、地方人民政府や検察院、法院等を監督する「監督権」、そして地方性法規を制定する「立法権」がある。

    (憲法第96条、第97条、第99条、第100条)
  • 人民代表の選挙方法
    基本的に末端の地方人民代表大会である県級、郷級の人民代表は、政治的権利を剥奪されていない満18歳以上の有権者による直接選挙で選ばれ、基本的に地級、省級の人民代表は1級下の人民代表大会が選挙する間接選挙となっている。任期は、省級・地級・県級が5年、郷級が3年である。
     直接選挙、間接選挙ともに候補者を選挙すべき定数を上回ることが義務づけられている。これは「差額選挙」と呼ばれる。(憲法第97条)
  • 常務委員会
    人民代表大会は通常、1年に1回開催されるが、これを補うため、県以上の人民代表大会には常務委員会が置かれ、代表から選出された常務委員により、2ヶ月に1度程度開催される常設機関として機能している。任期は人民代表大会の任期と同じである。(憲法第96条2)
  • 立法権
    省と直轄市、省と自治区の政府が所在する地級市、また国務院の承認を受けた全国18の地級市(例として江蘇省では無錫、蘇州、徐州)の人民代表大会に、条例を主とする地方性法規の立法権が認められている。省級未満の地方性法規は、原則として省級の人民代表大会常務委員会が批准する。(憲法第100条)

  1. 地方人民政府
  • 地方人民政府の職権
    地方人民政府(以下「人民政府」という。)は、人民代表大会の執行機関であり、行政機関である。人民政府は同級の地方人民代表大会と一級上の行政機関(省級であれば国務院)に責任を負う。

     その職権の主なものは、予算と経済計画を執行し、同級の人民代表大会の決議と上級の行政機関の命令等を執行し、県級以上の人民政府は、下級の人民政府を指導し、不適当な命令等を取り消すなどであるが、具体的には、福祉、衛生、教育、交通などのあらゆる分野の行政が人民政府により行われている。
    (第105条、第107条、第108条)


  • 地方人民政府の組織
    各人民政府には人民代表大会で選出(有権者による直接選挙ではない)された省長および副省長、市長および副市長、県長および副県長、郷長および副郷長、鎮長および副鎮長がいるが、長職は一人、副職は数人の定数があり、責任制を実施している。県級以上の幹部の任期は5年、郷級は3年で人民代表大会の任期と同じである。
     
     組織としては、例えば、省では、一般に財政庁、民政庁、公安庁等の庁、経済委員会、農業委員会等の委員会、人事局、水産局等の局がある。直轄市では、省と異なり局と委員会が多い。これらの組織は、国務院、上級の人民政府の組織とほぼ対応した関係になっていることが多く、中央集権制による上下関係が存在する。(第106条)

  1. 共産党の地方組織との関係
  • 中国の地方行政制度を見るに当たり、中国は共産党の一党支配下にある社会主義国であり、その統治制度においては党が国家に優越していることに留意する必要がある。党の国家に対する優越は、地方の統治機構においても貫徹されている。つまり党機構が、中央から地方まで国家機構と並行して存在しており、どのレベルにおいても党委員会などの党組織が国家機構を指揮することになっている。

    省級地方であれば、省党委員会のトップ(書記)の下に数名の副書記と、数名の常務委員がおり、通常、省人民政府の省長は、省党委員会の副書記にランクされる。地方の国家機構は、中央国家機構と党地方組織を通した党中央の強い統制下に置かれているのである。