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九万ドルの乱闘
一九五〇年代に、ジョン・コールマンという男がウォール街を仕切っていた。また、ニューヨーク市を動かす人物とも言われていた。コールマンを恐れる者もいれば憎む者もいたが、ウォール街で仕事をしたなかで最も力のある男だった。

  ボブ・スカヴォーンは、ニューヨーク証券取引所の立会場で働く古参のスペシャリストで、コールマンの自信にあふれた仕事ぶりを覚えている。コールマンはウォール街の「聖者」であり、彼の言葉は法律そのものだった。コールマンにとっては不幸なことだが、彼の力が強大すぎたばかりに、ある命令を下してすこししばかり財産を失うことになった。

  そのころ、コールマンの義理の息子が彼の会社で働いており、しばしば市場のエチケットを無視した。彼はソフト・ドリンクをこっそり立会場に持ち込み、取引ポストの後ろに隠した。当時、コールマンはコカコーラのボトリング会社---コーク・オブ・ニューヨーク社にポジションを持っており、合計で約八万から九万株だったという。彼の会社の帳簿では、当時かなり大きな所有株式だった。コールマンはボトリング事業がいずれ買収されると考えており、所有株式は急騰すると読んでいた。

  ある日、コールマンは、空のコークの缶が義理の息子の足元に転がっているのを見つけた。「コークを片付けろ」と彼は怒鳴ったが、はっきりと飲料の缶を指差したわけではなかった。義理の息子は必死で父親の命令を実行しようとしたのか、或いは少なくとも怒りを逸らすためか、大声で叫んだ。「コーク、九万株の売りだ」。喜んだ買い手がこの九万株に飛びついた。義理の息子は、持ち株のすべてをどうかに売りさばいた。すばやく、何も恐れずに売ったのは、優秀なトレーダーの証拠である。

  フロアに伝わる話では、翌日、コーク・オブ。ニューヨーク株は一ドル値を上げて、コールマンは一瞬にして九万ドルの利益をふいにした。義理の息子は二度とコーク缶を持つ込まなかったという。


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